4.省庁の対応

 

 

 オンブズマンに申し立てられる苦情の一番多い、社会保険省の社会保険給付庁(Benefits Agency)で、苦情処理の省庁における対応について、インタビューする機会を得た。それを中心にまとめてみたい。

 

BAは議会業務部長(Head of Parliamentary Business Section)デイブ・ウォーラル氏(Mr.Dave Worrall) へのインタビューのことである。)

 

 

 

(1)苦情についての省庁の対応

 

 

 

 a.対応窓口

 

 

 

 各省庁には、議会オンブズマン担当事務官(PCA nominated officer)がおり、議会オンブズマンの事案について対応をしている。

 

Q:所管されている業務について伺いたい。

 

A:私の部署は、社会保険給付庁の中にあり、実際に全ての議会に関係する事項で、社会保険給付庁に影響を及ぼすこと扱っている。

それは議会質問、議員からの手紙、最高責任者の職員が、あなたの国でもあると思うが、議会の特別委員会に出席しなければならない場合の対応も含む。我々はまた、議会オンブズマンにより調査される全ての苦情についても扱う。

 

 我々はまた、オンブズマンが調査する苦情についての社会保険省における集中的に処理を行うところとしても知られている。我々は実際、社会保険給付庁にいるが、社会保険省全体のために機能している。それゆえに我々は、社会保険給付庁の苦情についてのみ関与するのではなく、社会保険省の他の外庁の苦情についても関与する。一番多いのは、児童援護庁についてのものだ。

 

 我々は、オンブズマンからの全ての苦情についての対応をコーディネートする。我々はそれらを処理し、モニターし、進捗状況について、オンブズマン事務局と接触を持つようにしている。

 

Q:あなたのセクションの名前を教えてもらえるか。

 

A:議会業務部(Palriamental bussiness unit in the BA)だ。

 

Q:あなたの担当は、どのぐらいのスタッフを有しているのか。

 

A:3人のスタッフを有している。

    彼らは他のことはせず、議会オンブズマン関係の仕事だけしている。

 

Q:議会オンブズマン関係だけか。議員のための仕事はその人達はしていないのか。

 

A:議会オンブズマンからの苦情についてだけである。

   もちろん、オンブズマンへの苦情は、議員を通さなければならないが。そのスタッフは、一般的な議員からの手紙への返事等については扱わない。その他、議会質問等は、別のスタッフが扱う。部署全体では、約30人のスタッフを有している。我々はオンブズマンから、年間約150から200件の新しい苦情を受け取る。しかし、我々は、毎月、約400から500の手紙を議員から受け取る。

 

Q:毎月か。

 

A:そうだ。

ただそれらは苦情である必要はなく、単に情報を求めているものも多い。長官が対応する。

 我々は、調整、進捗状況の確認、監視等の役割をしている。我々は実際、不適正行政が起きたと苦情が言われているところの領域の人々に頼っている。我々にオンブズマンが調査をすることについての情報をもらったりしてだ。

 

 我々は、社会保険省の中の全ての外庁の苦情を扱う。社会保険省には、5つの異なった外庁がある。給付庁は、その中でも一番大きなものである。児童援護庁、戦時年金庁、国民保険保険料等を扱う保険料庁、電算処理庁がある。それらの庁の長官は、みんな、事務次官が委員長をしている省の委員会(ボード)を構成する。それはロンドンの社会保険省にある。外庁と言っても、社会保険省の外庁のみについてのものを扱うのである。

 

Q:それぞれの外庁に同じような部署があるのか。

 

A:それぞれの外庁に苦情を集中的に扱う部署はある。

   ただ、「PCAノミネーティット・オフィサー」呼ばれるものは、省の単位で存在するものである。今、私が社会保険省のノミネーティット・オフィサーである。社会保険省の全ての外庁のことをカバーしている。我々のような大きな省で、他の省庁と比べて、重大な数の苦情を扱うので、我々は我々自身で、他の外庁との間で組織している関連担当部を有している。しかしながら、省自身のノミネーティット・オフィサーは私1人である。他の省もそれぞれ1人を有している。我々は全て、それぞれの省庁において、議会オンブズマンのための、そして部分的には内閣府のための連絡先になっている。内閣府は、議会オンブズマンに対して、管理、政府の教育等、全体的に責任を負っているところである。もし彼らが省庁に連絡をとりたい場合、オンブズマンに関して何か政府で広く対応したい場合、彼らは個々の省庁の事務局の、それぞれのノミネーティット・オフィサーのところに来る。

 

 こうした制度は、私は組織の観点からも、また節操の観点からも必要だと思う。扱いの一つの方法を全ての省庁で行うのでなく、それぞれ異なった方法でそれぞれの省庁で行うことができる()

 

 社会保険給付庁が1991年にできた時、()我々は、オンブズマン事務局と、連絡先をそれぞれの外庁に置くかどうかということについて話し合った。彼らは実際、省について一つの連絡先を置くことを望んだ。その方が省庁の扱いが簡単だからだ。(BA)

 

 

 

 b.調査への協力

 

 

 

 オンブズマンによる調査は、申し出された苦情についての省庁側のコメントを求めることから始まる。

 

(3.(2)b.参照)

 

 

A:我々は苦情についてのコメントを求められる。

応答の期限は6週間以内だ。彼らは3週間以内の応答を望むが、我々に認められているのは6週間である。もし6週間より長くかかれば、オンブズマンは、実際、議会の特別委員会に、我々のことを問題あると言うことになる。

 

 我々が苦情を手にすると、ロンドンの議会オンブズマン事務局から、同様な内容の、公式のコピーが我々のところに送られて来る。彼らは事務次官に公式のコピーを送ってくるのである。私のスタッフが、そのコピーを、すぐにその苦情の関係しているところに送る。もし苦情が、特定の外庁の地方事務所の行為が上手くなく、社会給付について話をしたり、遅れや間違った情報を与えたりしたものとされていれば、我々はすぐにその情報をその事務所に知らせる。彼らは、関係した全ての文書により支えられる、生じたすべての出来事についての声明を表明しなければならない。オンブズマンはフォトコピーではなく、トップコピーを見るのを求める。我々は全ての文書等のフォールダーを作る。トップコピーとは実際、原本の文書で、フォトコピーではないということだ。

 

   このオフィスがレポート作成に関わることは、地域管理者との関係で、もしそれが特定の事務所のことと言うより中央の社会給付庁や児童援護庁自体の問題の時だ。それは、本部にあるその特定事項を扱う部署に来る。所得補助、無資格者手当等は、ここ社会保険給付庁、子供に対する支払いの管理についてのことならば、児童援護庁、戦時年金のことなら、戦時年金庁という具合である。

 

   彼らがそれを見た後で、返事を作る。その返事が我々の、調整のための部署に来る。我々は、事案を事務次官、長官のところに、サインをして、議会オンブズマンに応答してもらうために戻す前に見る。我々の部署の仕事の一つは、カバーされている全てのアングルを確認することである。それは省庁全体にわたって矛盾のないものとすることである。もちろん、特別委員会と議会オンブズマン事務局により定められた時間の内においてである。

 

 我々はそれから特定の事案について、記録しつづける。議会事務局がいかなる点についても、更なる情報を求めて、我々に接触して来た時に、我々はそれらの情報を彼らのために手に入れる。

 

 そして我々は事案を監視していく。彼らから報告の草案が示される時、同意するかどうか検討した結果のコメントが求められる。そしてそれは事務次官や長官のところに再び持って行かれる。

 

 最終報告の中で、議会オンブズマンが勧告を行っている場合で、我々が同意し、我々がその後の対応をする場合、我々の部署は、その進捗を監視し、我々は求められる報告を戻す。我々は実際に我々が行うように言われた行動を行ったということを報告する。

 

Q:議会オンブズマンの調査官が文書ファイルを調査する時、彼らはどこでそれを行うのか。

   ここに来て調査をするのか、それとも、あなたのところから、議会オンブズマンの事務局の方に送るのか。

 

A:我々は、それらを議会オンブズマンの事務局に送る。

   最初に彼らはそれらを見て、彼らが必要な文書を全て手に入れたと考えた時、彼らは通常、それら文書を我々に送り返して来る。しかし彼らの調査に必要な部分についてはコピーを取っておく。というのは、よく、給付の要求が継続していたりするからだ。まだ多くの文書が、支払いを続けたり、要求を検討するのに必要だからである。

 

   ただ、オンブズマンは、彼らが更に情報が必要であると思った時、実際に支払い等が行われた事務所を訪問し、事案に関係した個々の事務官から話を聞いたりする。彼らは通常、我々が非常によくコンタクトを取っていても、事案に関しては、ここの我々を訪ねない。なぜなら、我々は調整の機関だからだ。たぶん我々と最初に接触をとり、我々が彼らのためのアレンジをするであろうが。

 

   我々はオンブズマン、そして彼のスタッフと、大変良い関係を持っている。彼らもそう言ってくれていると確信を持っているが。実際我々のところが特別委員会の証人として喚ばれた時も、我々のスタッフがその事案について、毎日、担当しているオンブズマン事務局の調査官と働いた。()また、最近5年になるはずだと思うが、我々は資料提出等の時間的制限に遅れたことはない。設定時間の内に応答している。そして実際、更に、議会オンブズマン事務局と、個々の調査における対応の時間について、我々が「第2段階」と呼んでいる調査の段階に生じた特定の情報を求められた場合、そしてまた、「第3段階」の報告草案の提案の段階での時間についても合意している。

 

   私は、かなり定期的に議会オンブズマン事務局の課長達に会う。またオンブズマンのスタッフが実際ここに来て、我々が動いている仕方について考えを得る。顔を合わせておけば、電話でも話がしやすい。今度のオンブズマンのバ-クレー氏も、実際3月6日に、ここに訪ねて来る。長官を訪問し、その後私と私のチームを見て、どう働いているかを、実際に制度がどう動いているかを知る。そしてその後、私たちが、彼をリーズにある地方事務所に案内し、業務の第一線がどう働いているかを見てもらう。人々をどう扱うかということを。事務所の中で、そして業務を行っている人、実際に苦情を扱っている人と話をしてもらうことになっている。(BA)

 

 

 

 

(2)救済への対応

 

 

 

 

 

Q:どのようにオンブズマンの勧告である不適正行政の是正等に対応しているのか。

 

A:省は、その対応に積極的である。

   事案を非常に徹底的に見ている。あなたは、オンブズマンが一般的には我々の対応に大変満足していることを見つけることができると考える。もし彼がそれは不適正行政であると言って来て、我々は彼が言っていることを受け入れた場合、我々は、我々の特別の  支払いの制度により、いかなる支払いも、いかなる是正を行うことも拒まない。

 

Q:私は、オンブズマンの昨年(1995)の年次報告書の一部を持って来た。

   ここには、是正の考慮について社会保険省が内部指導を見直したと書いてある。

 

A:そうだ。この「不適正行政の金銭的救済」の冊子がそれだ。

これを差し上げよう。これは社会保険省全体のスタッフのために我々が発行したものである。この表紙には、社会保険省の全ての外庁のマークが載っている。金銭的救済を行う苦情をどう扱うかについてのものである。()

 

Q:オンブズマンは省庁にものごとを行わせる強制力は有しない。

勧告をするだけである。それゆえ、この「任意の支払い」のようなものは、制度を支える大変重要なものの一つであると思う。

 

A:「任意の支払い」について、オンブズマンは実際、そうした支払いを強制することはできない。

   強く勧告するだけである。理由があることで、我々は通常受け入れている。しかし、事案によっては、断ることができる。もしオンブズマンが依然として、そうした支払いをすべきと考えている時は、彼はそれを特別委員会にかけることができる。非常にまれな事案であるが、オンブズマンが依然として、救済されていない不公正があると考えた事案が、この省庁に対するものではないということ  は喜んで言えるが、運輸省に関するものとして、最近あった。

 

Q:海峡トンネル鉄道連結事案。

 

A:そうだ。いかなる変更も関わった省庁、大臣としては大変難しいことがある。

   実際、省庁には、オンブズマンの勧告に従わなければならないという、法的な義務はない。普通に言えば、我々はそうすることが期待されてはいるがである。

 

   またオンブズマンは、個々の事案についての報告草案を、発行される前に示し、それに対するコメントを与える機会を与え、彼が認めたことを議論し、上手くいけばどういう行動を彼らがとるべきであるかということについて、合意に達することができる。いつもすんなり行くとは限らない。オンブズマンが、省庁がさらなる行動をとるべきだと考え、省庁側がそれを行うこともある。

 

   この省庁で起きたことは、児童援護庁について、あなたも知っているかと思うが、多くの問題があった。この新しい外庁は、仕事の初期の段階で、社会保険給付庁が法に従い給付を行うのとは異なる大変難しい仕事を有していた。児童援護庁は、両親が別れてしまっているような場合に、子供の世話をしている方の親に支払いがなされるよう、もう一人の親に対して求めていた。一方の親にして見れば公正であるように見えても、他方の親にしてみれば、不公正に思える。それゆえ、そこには多くの苦情が生じた。例えば、子供の親で、子供の面倒をみている親が、そこに来ていない親から充分な支払いを受けてないと言い、そして来ていない親の方からも同様に苦情が申し立てられる。そのような場合、彼らは援護庁から受ける支払いが多すぎるようになってしまった。

 

   オンブズマンは、我々が要求の扱いに非常に時間がかかっているので、是正を行うべき領域があると感じた。扱いに時間がかかっている理由の一つは、一方の親からの苦情に対し、我々がもう一方の、そこにいない方の当事者から返事を得ることができないからだ。最終的には、実際、大臣が新しい立法措置を導入した。その措置の導入により、外庁はある権限を手にした。

 

   オンブズマンは我々に、立法措置で手続きを変える前についても、遡って責任ある支払いをすることを望んだ。それは我々に大変危険な先例を作らせることになると我々は感じた。()最終的には、我々はオンブズマンと、特定の範囲においてそれが必要だということを特別報告書に入れることで一定の合意に達した。オンブズマンのやることには、疑いなく大きな力があり、影響力がある。

 

 

 

 a.金銭的救済

 

 

 

A:金銭的救済について。

我々が最近作った「不適正行政の金銭的救済」により、我々が間違って社会保険給付をしなければならない人にしなかったり、正しい時期に支払いをせず、長いこと遅れたりした場合に、対応を行わせることができる。

これがオンブズマンが1995年の年次報告書で触れている内部指導である。

このコピー(出版物)は議会図書館に置かれている。そして誰でも来て見ることができる。これは実際に新しいもので、前のガイダンスは、内部だけの指導で、誰でも見られるように、外にでることはなかった。開かれた政府の政策により、我々は今、誰でも見られるようにした。それゆえ、人々は、どのような時にどのような金銭的救済がされるかを見ることができる。()

 

   給付ごとにそれぞれルールがある。我々は、その社会保険給付が何であるかによって、給付のターゲット・目標を有している。給付の要求に対し、この特別の支払いのスキームでもし我々がターゲットの3ヶ月後であった場合、「利子支払い」を行う。なぜなら彼らは、より早い時期、すなわち彼らが受けるべき時に受け取れなかったからだ。それについての全ての情報は、そこにある。

 

 我々はまた、不適正行政の結果として、個人的な金銭的損失を他の理由により被った場合、例えば、事務所を訪ねるのに特定の旅行をしなければならなかったり、多くの電話をしなければならなかったり、法的助言を求めるための費用は、我々が間違いを認めた時に、受け入れることがある。新しいカテゴリーで我々がそれに入れたものは、スタッフの不適正行政の結果として生じた、ある種の深刻な苦痛や大きな困惑についてのものである。それらはすべてこれに入っている。もしこの点についてより知りたいのなら、ニューカッスルの保険料庁の中にある特別の支払いのユニットに話をすべきかもしれない。そこがそれを作る責任を有しているところで、そこにいる人々が議会オンブズマンが言及した内部見直しを実施したところである。(その他、5.の項参照。)(BA)

 

 

 

 b.職務改善策

 

 

 

職務改善策につき、議会オンブズマン特別委員会報告(第4報告:平成81016)の記載を引用する。

 

 

15.サー・ウイリアム・リードは、委員会に、(1994年の46件と比較して、)彼の調査における76件の事案が手続的に改善されたと述べた。彼は、「私が勧告した方法において、例外を除いてほとんど、関係した機関の幹部により、改善事項の積極的な促進として受け入れられた」と賛辞を呈した。我々は、オンブズマンの精査から生じた、市民サービスにおける恩恵のそのような例を記すことを喜んで行う。その一つの重要な例は、この委員会とオンブズマンの勧告に応えて、不適正行政と救済について、大蔵省によって指導が出版されたことである。内国歳入省と社会保険省が作っていた、あるいは作ろうとしていた、彼ら自身の指導は、新しい原則に基づくものである。サー・ウイリアム・リードは、「それが、それらの外庁を除外するものとならないことを」希望した。「私は、不適正行政の新しい救済の哲学が、私の管轄内にある全ての機関に行き渡ることを希望する。」

 

 

A:()

更に加えるならば、議会オンブズマンは年に1回の年次報告書の他に、四半期ごとに選抜事案の特別報告を出している。人々はそれを見ることができ、個々の事案について認識することができる。それは出版され、議会に示され、全ての省庁に送られる。省庁はそれを勉強をすることを求められ、それらから得られる教訓を学ぶことを求められる。

 

   職員はそれらの事実を見る。それは、我々の部署が準備して行う。我々は、それを手にすると、まず我々自身で良く見て、それから、給付庁だけではなく他の外庁も含めて社会保険省全体に配布する。そして、我々は、そこから何を学んだかについての報告を戻すことを求める。何がそこから    取り出すことができたか。何が彼らがやっている仕事に適用することができるかについてである。

 

   議会オンブズマンや特別委員会だけがそれに興味を持っているからだけではなく、()事務次官や長官が実際に特別委員会に喚ばれることがあり、我々は委員会を満足させられるような情報の提供を行わなければならない。オンブズマンが何を言ったを考慮することは、何より良い方法だ。

 

 また実際、管理の視点からも、オンブズマンの報告の苦情は大変役立つものである。というのは、上手くいかなかった領域で、我々が注意をしなければならないところを認識させてくれる。

 

 私は、社会保険省においては特に重要だと思う。というのは、我々はオンブズマンの最大の顧客で、他のどこよりも我々についての事案が多いのは事実だからだ。ただそれは驚くことではないと思う。なぜなら、我々は政府全体の支出の約3分の1を扱っている。我々は明らかに、事実上、国中の人々の生活の中に入っていっている。扶養給付、出産給付、疾病給付、退職給付、年金、保険料の支払いの責任等、それらは全て個人的な資格に関係している。個人的に影響して来ることなので、例えば交通等、広い分野に影響することより苦情を申し立てやすい。しかし、我々は、確かにオンブズマンが、当省が、事案が一番多いからと言って、事務の取扱いが最悪の省庁であるわけで    はないという事実を認め、正しく評価していることを見出すことができる。

 

   私は今、オンブズマンの1996年の年次報告書の第一草案を手にしている。オンブズマンの事務局が、報告書を出版する前に、省庁にコメントを言う機会を与えて送って来たものである。(BA)

 

 

 

 ○あなたのファイルのオンブズマン

 

 

議会オンブズマン特別委員会報告(第4報告)には、次のような記載がある。

 

 

16.中央官庁におけるオンブズマンの仕事の認識は、委員会の勧告への対応としてなされた「あなたのファイルのオンブズマン」という公共サービス省の小冊子による広報によってまた、促進されるであろう。しかしながら、我々は、1万4千部しかそれが印刷されなかったことを知って、多少心配している。これは、約50万人の、オンブズマンの管轄をカバーするものとしては、充分なものではないように思える。我々は、より多くの冊子の部数が印刷され、オンブズマンの管轄の下にある機関で働く全ての人が、より広範囲に利用できるようにされることを勧告する。

 

 

 

A:我々はまた、この「あなたのファイルのオンブズマン」を省庁全体に配布している。

   事実、内閣府から別に我々の職員に送るために1万部を得ている。最初に来た時、この冊子の配布の最大のシェアを占めていた。しかし、特別委員会で事務次官が我々の職員がいくらいるのかと聞かれた時、給付庁全体で、7万人いると答えたら、委員会は、我々は5万から6万冊を有するべきで充分でない考えたので、内閣府は別に印刷を行った。また費用がかかってしまう。内閣府が負担するので、我々の省庁のコストではないが。(BA)

 

 

<参考>市民憲章プログラム

 

 

 

 ○市民憲章の概要

 

 

    前述の「政府と個人」という本には、市民憲章の概要について、次のように記されている。

 

 

市民憲章と開かれた政府

 

 

 

 政府は、英国においてより開かれた、責任のある政府を作ることを約束した。そして議会と一般国民が利用できる情報の量と質が近年において大きく増加している。政府をより開かれたものにするこの動きの核心は、1991年に総理大臣によって始められ、全ての公共サービスの基準を掲げ、それらを利用者の要望と必要性によりよく応えるようにするよう作られた、市民憲章計画である。()

 

 

 

市民憲章

 

 

 

1980年代の早い時期まで、政府は、費用を追加することなく公共サービスの質を改善する方法をさがしていた。非常に多くの場合、公的機関は、受け手より供給者側に合ったように考えられたサービスを提供していた。一連の大きな改革が、これらサービスに、より大きな経済性、効率性、有効性*をそそぎ込む努力のために実行された。その改革は、

 

-個々の政府省庁の中での効率の精査

 

-市民サービス管理者への予算の委譲

 

-政府の行政機能の実施のためのエージェンシー(外庁)の創設

 

-適正な競争を促進するための市場試験(market testing)を拡大し、納税者のため金銭の最善の価値を獲得する

 

市民憲章のプログラム(計画)は、サービスと利用者の間の関係を見ることにより、この改革計画を拡張したものである。

 

(*3E検査

 

 経済性(economy):同じ成果をあげるのにもっと安い経費ですむ方法があるかどうか。

 

 効率性(efficiency):同じ経費でもっと大きな成果をあげる方法があるかどうか。

 

 有効性(effectiveness):当該施策の実施によって所期の目的がどの程度達成されているか。)

 

 

 

公共サービスの原則

 

 

 

市民憲章は、公共サービスの使い手が与えられることを期待する重要な原則の幾つかをやりはじめている。

 

 

 

(サービスの)基準(Standards)

個々の利用者が期待するにもっともなサービスのための明確な基準を設定し、監視し、発表する。

 

 

情報の開示(Information and Openness)

 

いかに公共サービスが行われているか、その経費、業績、責任者が誰なのかということについての、 完全で正確な情報が簡素な言葉で容易に利用できるべきである。

 

選択肢の検討(Choice and Consultation)

 

サービスを利用する人に対し、定期的で制度的な相談がなされるべきである。サービスについての利 用者の視点、それらを改善することについての優先順位は、基準を最終的に決める際に考慮されるべき ものである。

 

 

 

丁寧・親切(Courtesy and Helpfulness)

 

常に名札を付けている公務員からの丁寧で親切なサービス。サービスが、それらについて資格を与え られている全ての人に同様に利用でき、彼らの都合に合わせて行われる。

 

 

 

適正化(Putting Things Right)

 

物事が上手く行かないときには、謝罪と、完全な説明そして素早く効果的な救済策が与えられるべき である。よく知らされた、使い易い苦情申立制度が、可能な場合はいつでも独立した見直しを伴い、利 用できるべきである。

 

 

 

費用に見合った価値(Value for Money)

 

国が持ちうる資源の範囲内での、効果的で経済的な公共サービスの提供と、基準に対する業績の独立 した確証。

 

 

 

 市民憲章は、国と地方レベルの全ての公共サービスに適用される。今日において私企業となっているガス、水道、電気、電話等の主な公共事業もカバーする。

 

 現在、1995年の半ばまでに、ほとんどの主な公共サービスが憲章を発表していおり、40が出版されている。多くの場合、別個の憲章が、北アイルランド、ウェールズ、スコットランドにおいて発表されている。また、開業医行為規範、警察、消防といった、地方の公共サービスをカバーする何千もの地方の憲章も出されている。相談は、一般市民にとって重要な優先順位と目標を把握できるので、基準を設定することを助けるのを可能にしている。

 

 いろいろな患者憲章が、患者の権利と公的医療サービス(NHS)に期待できるサービスの基準を設定しており、例えば、具体的な日付まで、事実上あらゆる措置について、病院に入る許可を保証するといったものである。また、外来患者のための具体的な時間の約束と、その時間の30分以内に検診される権利もそこにはある。父母憲章の下において、父母には、学校の試験の結果、国家カリキュラムテストの結果、ずる休みの状況、学校を離れた者の行き先等の情報を与えられている。彼らはまた、試験やテストの結果を含む、書面による子供の成績の年次報告を受け取っている。他の憲章は、さらに先のより高度な教育について、生徒や勤労者に与えられ、教育の質についてのより広範な地域社会の情報が、彼らが知らされたものからの選択が可能なように与えられている。

 

 社会保障については、例えば、社会給付庁の利用者憲章は、社会給付に関する苦情の解消のための目標を含むものである。

 

 他の市民憲章の実行の例としては、地方当局から不動産保有者へのサービスの改善がある。不動産保有者に、どのように彼らの権利を行使するかということを示す情報が与えられ、そして不動産保有者協会、地所管理委員会、不動産保有者管理共同組合を通して、どのように彼らの住宅に及んでより巻き込むようになるかについての助言を行うことについての情報も与えられている。また、地方当局によりサービスと業績の基準についての情報も、毎年与えられている。

 

 公共サービス局(the Office of Public Service)における憲章担当部(the Charter Unit)は、憲章の原則の実施について、政府省庁と他の全ての公的機関と協力して活動を行っている。苦情特別委員会が1993年に設立され、公共サービスの苦情申立手続の有効性について、見直しを行っている。市民憲章表彰のスキームが、公共サービスの提供における優秀さと技術革新に対し与えられている。

 

 

 

 ○苦情処理の見直し

 

 

 

 市民憲章の動きの中で、苦情制度についての見直しも行われた。「政府と個人」には、次のようにその概要が示されている。

 

 

 多くの公共サービスは、彼ら自身の内部の苦情制度を持ち、苦情について検討し、補償や他の救済を適当な事案についてなすことを可能にしている。市民憲章計画は、苦情制度の発達に強い影響力を持ってきた。

 

 市民憲章苦情特別委員会は、1993年に設立され、多くの公的機関における苦情制度の働きについて見直しを行って来た。その勧告が、「適正化(Putting Things Right)」という1995年の6月に出版された報告の中で表されている。特別委員会は、苦情制度が次のようであるべきだと言っている。

 

-容易に利用しやすく、良く知らされていて、可能な限りの独立した調査を伴う

 

-簡単に理解でき利用できる

 

-行動のために設定されるタイムリミットをもって、速い取り扱い可能にする

 

-人々に審査の経過を詳しく知らせる

 

-完全で充分な調査を保証する

 

-秘密についての人々の要請を尊重する

 

-論争中の全てのポイントに言及して、効果的な対応と適切な救済を可能にする

 

-サービスが改善されることができるように、管理についての情報を与える

 

 

 1995年の報告における調査結果の中では、次のようなことがあった。

 

-数年前より公共サービスは、彼らの苦情をより進んで聞くようになったと、多くの人々が認めている

 

-増大する数の公共サービスが、苦情申立人が不満なままでいる苦情を再検討するために制度を設立した

 

 

 特別委員会と共に活動している苦情見直しグループは、北アイルランドに設立されている。

 

 政府省庁や公共機関から受けた扱いについて苦情を有している者は、一般的に、まず、関係する機関に連絡すべきである。多くの苦情は、満足いく形で平穏に地域レベルで解決されることができる。もし結果が満足いかなかった場合、いくつかの機関は、その問題を検討してくれる独立した裁定官(adjudicator)、苦情担当官、オンブズマンを有している。代わりとしては、関係のある機関に対する苦情を調査する力がある独立したオンブズマンが存在するだろう。

 

 

 

 省庁の対応も、この市民憲章による影響で変わって来ている。

 

A:これは、社会保険給付庁で出して、全ての事務所にあるものだが、これは見たことがあるか。

 

Q:いや、初めてだ。

 

A:これは「よい行いのガイド」である。

給付庁の全ての人に、苦情をどう扱うかということについての基本的な情報を知らせるものである。苦情の対応は、金銭的支払いばかりではない。受けたサービスのレベルについての苦情の場合、例えば、性的、人種的差別等。これは、給付庁のもので、他の外庁にも同様なものがあると思う。

 

Q:たぶん議会オンブズマンか特別委員会の勧告による。

全ての省庁は、こうしたものを作らなければならないとされているからではないか。

 

A:そうだ。

そしてまた、あなたも知っていると思うが、内閣府の市民憲章ユニットというところがあり、そこには苦情特別委員会というものがあり、そこが省庁が何をしなければならないかについて勧告を出した。これは実際、彼らが作った指針に基礎を置いている。彼らはこれを見て良い出版物だと言った。これはもちろん、議会オンブズマンの事案よりさらに広いものを扱っている。というのは、比較的少ない事案が実際に議会オンブズマンのところまでいく。多く人々がその段階に行くまでに、苦情の処理の結果を出そうとするからだ。

 

 苦情をオンブズマンのレベルに行く前にできるだけ多く受け付け解決を図ることが大切と考えている。それゆえ本庁職員がどう苦情を扱うかの冊子を出している。もし問題が生じた地域で苦情を受け付け処理する良い制度があれば、事案はオンブズマン等のところまでは行かないだろう。それで人々が満足できれば良い。最初に地域で苦情を上手く解決できることを我々はまず考えている。

 

 それから、このリーフレットは、我々の地方事務所のために、そして郵便局に置くために作ったものである。どのようにして苦情を申し出るのかについて説明をしてある。()給付庁に関係する一般の人に最初に渡す冊子でもある。上手く行ってないと思った時の対応が書かれている。新しい冊子には、短くオンブズマンについても言及していると思う。

 

Q:オンブズマン事務局に行った時に、最近3年のオンブズマンが受理する事案数の急激な増加の原因を尋ねた。

市民憲章の影響が一番大きいということだった。それぞれの省庁がこうした冊子を作って、人々が苦情を申し出る時の助けとなっているからだと言っていた。

 

A:そうである。我々は、市民憲章が求めているものに全て応えなければならない。()

 

Q:そうした環境というのは、国民にとって、政府から良いサービスを受けるのには良いものであると考える。

私の住んでいるフラットの近くにある公立図書館に行って驚くのは、あなたのところをはじめ、いろいろな役所からの、苦情申立に関する資料が一つのコーナーを作る位の規模で出されていることだ。それらは国民にとって良いと思う。しかし、こうした冊子を作ったり、オンブズマンからの調査要求に応じて提出資料に代わるコピーをとっておいたりするには、莫大なコストがかかると思うのだが、そうした点について、どう考えるか。

 

A:今、全ての省庁は、コストについて大変考慮している。

というのは、予算が削られて来ているからだ。我々はコストについて注意深く見ている。将来においては、たぶん我々はそうした文書をしょっちゅう改訂することはしないだろうし、そんな多くのものを作ることはないと思う。しかしここのような省庁において、そのバランスは難しいものがある。我々は、お金を集めることもしているが、明らかに基本的にはサービスを供給する省庁である。議会が決めた、困窮していたり、病気であったり、年をとったりしている等の状況の人には給付を与えるべきだとする立法を受け、我々が  資格をもっている人にそれを確保しなければならない。実際にこのような給付を行うコストとのバランス、議会の立法のもとでの求められる責務との関係は難しいものがある。

 

 あなたの国のように、初めてこうした苦情処理制度を設立するような場合は、一層難しいのではないかと私は思う。最初に設立のときにかかるこうした費用は、実際、より大きなものとなるのではないかと思う。(BA)