○参議院における総予算審査

 

  

◆「総予算審査の順序」

 

 

平成25年版参議院委員会先例65(参議院のホームページ(http://www.sangiin.go.jp/index.htmトップ関係法規先例には、総予算審査の順序として、次の記述があります。

 

「総予算を審査するには、まず、財務大臣から趣旨説明を、次いで副大臣から補足説明を聴いた後、総括質疑及び一般質疑を行い、この間公聴会を開き、さらに他の委員会に対し当該委員会の所管に係る部分の審査を委嘱し、又は数個の分科会に分けてその審査に付し、これらの審査が終わった後、再び総括質疑を行い、討論の後、表決に付するのを例とする。」

 

更にこの先例の注には、次のようなことが書かれています。

 

・「補足説明」:昭和54年度総予算の審査以降はこれを省略し、会議録の末尾に掲載。

 

・「総括質疑」:国政全般にわたり総括的な問題について、内閣総理大臣の出席の下に内閣の統一的見解をただすもの。平成12年度総予算審査以降は、総括質疑を「基本的質疑」、再び行われる総括質疑を「締めくくり質疑」と称する。

 

・「一般質疑」:主として各省担当事項について、所管大臣の見解をただすもの。

 

・「委嘱審査」:昭和57年度総予算の審査以降行われることとなったが、昭和62年度及び平成元年度の総予算の審査に当たっては、審査期間の関係上、委嘱審査を行わなかった。

 

・「分科会」:昭和57年度総予算の審査以降は設けられていない。

 

このほかに、「集中審議」というものも行われます。

 

・「集中審議」:特定の政治課題について、集中して審議を行うもの。内閣総理大臣、関係大臣が出席。

 

 

▷以上より、委員会における参議院の総予算審査は、例として、次のように行われます。(「集中審議」が行われるか否かは、その時々の状況によります。)

 「基本的質疑」、「一般質疑」、「集中審議」、「一般質疑」、「公聴会」、「委嘱審査」、「集中審議」、「締めくくり質疑」、

「討論」、「採決」(→本会議へ)

(※予算の組みかえ動議(衆議院)、修正(参議院)については、次に触れます。)

  

 全て、参議院によるインターネット審議中継が行われています。

 NHKによるテレビ・ラジオ中継の有無は、NHKが決めますが、通常「基本的質疑」と「集中審議」は中継が行われます。

 

 

◆ 「組替え動議」と「修正案」

 

 

国会法第59条は、「内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となつた議案を修正し、又は撤回するには、その院の承諾を要する。但し、一の議院で議決した後は、修正し、又は撤回することはできない。」としています。

 

このただし書にあるように、一の議院で議決したときは、議案に対して既にその院の意思が加えられているのですから、内閣はもはや修正または撤回を求めることは許されないのです。

 

従って、予算については、必ず衆議院で先議されるものですから(憲法第60条)、衆議院において野党は「組替え動議」、すなわち「撤回のうえ編成替えを求めるの動議」を出すことはできても、参議院においては、「組替え動議」は、これを提出することは許されません。参議院において、野党が対案的に予算に対応しようとすると、予算の「修正案」を出さなければならないのです。

 

 

◆「予算の自然成立」

 

 

さて、委員会先例72には、憲法第60条第2項の期間が経過した例の記載があります。

 

日本国憲法第60条第2項は、「予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」としています。

 

 第19回国会、平成29年度総予算3案について30日の期間が経過し、自然成立。

 

 第114回国会、平成元年度総予算3案について30日の期間が経過し、自然成立。

  

 

◆「片道方式」

 

 

衆議院の予算委員会を行う第1委員室と参議院の予算委員会を行う第1委員会室の施設の大きな違いは、参議院の第1委員会室には、写真の「計時装置」があることです。

 

参議院の予算委員会における質疑は、「集中審議」と「公聴会」を除いて、基本的に「片道方式」が採られています。すなわち、質疑者の質疑時間の割当てが、例えば20分の時、その20分には、質疑者の発言時間だけが含まれ、答弁者の答弁時間は含まれません。どれだけ答弁者が時間をかけて答弁しても、「片道方式」の時は、当該質疑者が質疑したい時間に影響はありません。予算審議における30日の制約等がある中で、参議院での質疑の充実のために、採られて来た制度と言えましょう。

 

「片道方式」の場合、質疑は、何時から何時までとするわけに行きませんので、「計時装置」により、質疑者の残り時間を表示し認識する必要性から設置されたものと考えます。昭和40年には設置されていたとのことです。(表示盤は、室内に3台あります。)

 

質疑時間の割当てが20分の場合、答弁も合わせると、だいたい全体の質疑時間は、2~3倍、1時間程度となります。

 

質疑時間は、質疑者が起立して発言し、着席するまでを基本としますので、委員会スタッフの「計時装置」担当者は、質疑者の発言を聞き、動きを見ながら、操作台でボタンを押します。