○参議院の緊急集会

 

 

 

 憲法第54条第2項は、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」としています。この条項を見て、思い出すのは、平成17年8月のいわゆる郵政解散の時のことです。

 

 

 

 この年の9月、ニューヨークの国連本部で開かれる列国議会同盟(IPU)主催の第2回世界議長会議に、当時の河野衆議院議長と扇参議院議長は、ともに出席し、全体会議での発言のほか、ASEAN+3会合、アフリカ各国議会等との会議を予定していました。扇議長の秘書だった私は、国際部とともに準備を進めていましたが、8月8日、参議院本会議で与党からの「造反」等で郵政関連法案が否決されると、小泉首相は衆議院を解散してしまいました。

 

 

 

 さて、解散により、河野衆議院議長はその職を失いました。参議院議長には、国内において、何かあったときに開かれる参議院の緊急集会への対応が求められます。かと言って、中国の全人代委員長らも出席するIPUの5年に一度の重要な大会議に、(IPUに一番資金も出している)日本が欠席しなければならないのはあまりにも残念です。副議長に行ってもらう手もありますが、発言時間が短くなる等、制約があります。急遽、検討会議が開かれました。

 

 

 

 参議院の緊急集会は、今まで2度開かれています。

 

 

 

 第14回国会閉会後の参議院緊急集会・・・中央選挙管理会の委員の任命について、緊急の必要があるということで、昭和27年8月31日東京に緊急集会を開くことを、内閣から同年8月28日付けで求められました。

 

 

 

 第15回国会閉会後の参議院緊急集会・・・昭和28年度一般会計等の暫定予算並びに国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案、国立学校設置法の一部を改正する法律案、不正競争防止法の一部を改正する法律案及び期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案について、議決を求める緊急の必要があるということで、昭和28年3月18日東京に緊急集会を開くことを、内閣から同年3月14日付けで求められました。

 

 

 

緊急集会開催の可能性、議長会議の重要性等、様々検討されました。

 

内閣からの請求が、第14回閉会後の時は3日前、第15回閉会後の時は4日前ということもあり、副議長から「議長、私がしっかり国内にいて対応します。3日あれば、議長もニューヨークから帰って来られるじゃないですか。是非行って日本のプレゼンスを示してきてください。」というようなことを言われ、最終的に扇議長は、9月7日から9日まで開かれた世界議長会議に出席することになったのでした。

 

 

 

第54条第3項は、「前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。」としています。それだけの臨時緊急の必要性が今日においてはなかなか考えにくいですが、何か不測の事件が発生し、急に立法措置をとらなければならなくなることが全くないとは言えないため、衆議院が解散されている時の参議院議長は、それなりの心構えはされていると思われます。

 

 

 

 なお、参議院の災害対策特別委員会は、衆議院解散の閉会中でも災害に対応できるよう、継続調査要求を出し、参議院本会議で認められ、何かあれば調査で動くことができるようにしていることもあります。