○参議院の調査会

 

 

 

国会法第5章の2に、参議院の調査会が定められています。

 

以下、参議院のホームページにおける記述(明朝文字)について順序を入れかえたり削ったりしながらまとめてみました。

 

昭和61年5月、参議院改革協議会の答申(昭和6011月)に基づき、国会法及び参議院規則の改正が行われ、参議院独自の制度として創設されました。参議院に解散がなく、議員の任期が6年であることに着目し、長期的かつ総合的な調査を行う目的で設けられたものです。

 

14回通常選挙後の昭和61年7月には、第1期のものとして、「外交・総合安全保障に関する調査会」、「国民生活に関する調査会」、「産業・資源エネルギーに関する調査会」の3調査会が設置されました。

 

設置される調査会の名称、調査事項及び委員数は、基本的には通常選挙後に召集される国会において、議院の議決により定められます。こうして設置された調査会は、おおよそ3年間(議員の半数の任期満了の日まで)存続します。第11期における調査会として、平成289月に、「国際経済・外交に関する調査会」、「国民生活・経済に関する調査会」及び「資源エネルギーに関する調査会」が設置されました。

 

 調査会は、調査に当たり、参考人からの意見聴取、政府からの説明聴取、内閣・官公署等への資料要求、委員派遣等を行うことができ、また、調査の結果、立法措置が必要な場合には法律案を提出できる上、自ら法律案を提出する以外に、当該事項を所管する委員会に対して法律案の提出を勧告することができます。

 

 

 

調査に先立ち、各調査会の理事会において、調査を行うことが必要であると考えられる具体的な課題を、調査項目(以下「調査テーマ」という。)として選定し、選定された調査テーマに関して、3年間にわたって総合的な調査が行われます。

 

 調査に当たっては、参考人からの意見聴取、政府からの説明聴取、公聴会の開会、委員の意見表明及び委員間の意見交換、委員派遣等による現地調査などが行われています。政府からの説明聴取は大臣からのものでなければならないとはされていません。

 

 参考人からの意見聴取及びこれに対する質疑は、調査会の調査において重要な役割を占めており、各調査会では、外国人を含む学識経験者、各方面の専門家、実務担当者等を参考人として招致しています。

 

さらに、参考人から意見を聴取する以外に、公聴会や懇談会など、幅広く多様な意見を聴く機会を持ち、調査の充実を図ってきました。外交・総合安全保障に関する調査会(第1期)が、米国、ソ連、中国の駐日大使を、国際問題に関する調査会(第4期)が、ASEAN諸国の駐日大使を賓客として招いて懇談を行った例があります。

 

 

 

(参議院の調査会の成果の例)

 

 調査会では、毎年、多様な調査活動を踏まえ、調査報告書を取りまとめ、議長に提出しています。

 

 国会で、実質的に中身のある報告書を毎年出しているのは、現状では調査会だけと思われます。

 

 3年間にわたる調査の集大成として、国民生活に関する調査会(第3期)は、平成7年6月に「高齢社会対策基本法案」を提出し、同法律案は平成7年11月に成立しました。

 

共生社会に関する調査会(第5期)は、平成13年4月に、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律案」を提出し、同法律案は同月成立しました。同法律の改正案も平成16年3月に同調査会(第6期)より提出され、同年5月に成立しました。

 

また、平成元年6月の本会議において、外交・総合安全保障に関する調査会(第1期)の調査を受け、「国際開発協力に関する決議」が行われています。

 

平成13年6月の本会議においては、国民生活・経済に関する調査会(第5期)の調査を受け、「少子化対策推進に関する決議」が行われています。

 

平成16年6月の本会議においては、国民生活・経済に関する調査会(第6期)の調査を受け、「ユニバーサル社会の形成促進に関する決議」が行われています。

 

平成19年6月の本会議においては、経済・産業・雇用に関する調査会(第7期)の調査を受け、「ワーク・ライフ・バランスの推進に関する決議」が行われました。

 

 行財政機構及び行政監察に関する調査会(第4期)では、平成9年6月の中間報告において、行政監視のための常任委員会を設置するという案を取りまとめました。それを踏まえ、平成10年1月に召集された第142回国会から「行政監視委員会」が設置されています。   

 この調査会の関係で行った議会オンブズマン制度の海外調査に関しては、別に示してあります。

 

 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会(第9期)の平成25年5月に取りまとめられた調査報告書には、「総合的な水行政を推進し、水問題に効果的に取り組むため、水循環基本法の制定に向け必要な支援・協力を行うほか、雨水利用推進法の早期制定に向けて真剣に取り組むべきである。」との記載があり、調査会の活動は、これら2法案(平成26年法律第16号及び平成26年法律第17号)の成立の推進力の一つとなったと考えます。

 

大山礼子教授は、日本の国会は、主にポリスビーの言うアリーナ議会、内閣が提出する法案の善し悪しをしっかり議論する場だとしますが、参議院の調査会はそうした中であって、社会の問題を法律に変換していく変換型議会の役割を担っているものと考えます。