〇社会保障の充実と消費税と財政再建<平成31年度予算の位置づけ>(H31.1.27)

 

 

 

平成28(2017)925日安倍内閣総理大臣は、記者会見を開き、同月28日の衆議院解散を表明しました。(首相官邸ホームページ)

 

http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0925kaiken.html

 

「少子高齢化という最大の課題を克服するため、我が国の経済社会システムの大改革に挑戦する。私はそう決断いたしました。そして、子育て世代への投資を拡充するため、これまでお約束していた消費税の使い道を見直すことを、本日、決断しました。国民の皆様とのお約束を変更し、国民生活に関わる重い決断を行う以上、速やかに国民の信を問わねばならない。そう決心いたしました。28日に、衆議院を解散いたします。」というのが、その会見の最後の部分ですが、その前の部分に、社会保障の充実と消費税と財政再建について述べています。

 

「子育て、介護。現役世代が直面するこの2つの大きな不安の解消に大胆に政策資源を投入することで、我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換します。急速に少子高齢化が進む中、国民の皆様の支持を得て、今、実行しなければならない、そう決意しました。2兆円規模の新たな政策を実施することで、この大改革を成し遂げてまいります。」

 

「(略)人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。2%の引上げにより5兆円強の税収となります。現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する。そうした道を追求してまいります。増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます。」

 

 「他方で、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は、困難となります。しかし、安倍政権は財政再建の旗を降ろすことはありません。プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持します。引き続き、歳出・歳入両面からの改革を続け、今後達成に向けた具体的な計画を策定いたします。」

 

 

 

 総選挙後、引き続き政権を担うこととなった安倍総理は、平成281026日の経済財政諮問会議において、2020年以降のできるだけ早い時期にプライマリーバランス(国・地方の基礎的財政収支、Primary Balance、以下「PB」と言う。)黒字化を達成すべきであるという民間議員の提言を踏まえ、新目標の設定に向けた検討を行う方針を示しました。

 

 平成28128日、政府は「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定し、消費税の増収分を、教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と財政再建とに、それぞれおおむね半分ずつ充当する一方、PB黒字化の新たな達成時期等について、翌年の「骨太の方針」において示すとしました。

 

 平成302018)年523日、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は、遅くとも2025年度までにPB黒字を安定的に確保しておく必要があると提言しました。また、消費税率引上げを大前提とし、税収が想定を下回る可能性などを踏まえて歳出改革を徹底し、PB黒字を確実かつ安定的に達成できる計画を策定すべきであるとしました。

 

 平成306月、政府は、経済財政政策の基本的な方向性を示す「骨太の方針2018」を閣議決定し、新たに20182025年度を対象とする「新経済・財政再建計画」を示しました。

 

 

 

 「新経済・財政再建計画」の概略は、次のとおりです。

 

・国・地方のPB赤字 → 2025年度の黒字化

 

(中間指標:2021年度に対GDP1.5%程度)

 

・債務残高対GDP比 → PB黒字化と同時に安定的な引き下げ

 

(中間指標:2021年度に対GDP180%台前半)

 

・財政収支赤字対GDP比 →(2021年度に対GDP3%以下)

 

 

 

 平成31(2019)年度予算は、「新経済・財政再建計画」が策定されてから初めての予算編成です。消費税増税や、先の平成29925日総理の衆議院解散表明で触れられていた「幼児教育の無償化も一気に進めます。2020年度までに3~5歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。0~2歳児も、所得の低い世帯では全面的に無償化します。待機児童解消を目指す安倍内閣の決意は揺らぎません。」等も内容となっています。

 

 

 

 以上は、藤本守「平成31年度予算案の概要」『国立国会図書館 調査と情報―ISSUE BRIEF―』No.1033(2019.1.24)を基に、時系列で整理したものです。具体的な平成31年度予算に関する評価等はそちらをご覧ください。