特集3・行財政のあり方に関する研究

 

・英国議会オンブズマンを中心とした苦情処理制度の研究

 

   平成29年(2017年)、参議院予算委員会は、国会法第105条に基づき、国有地の売却等に関する会計検査要請を会計検査院に対して行い、その報告を受けました。この制度は、平成9年(1997年)の国会法改正で、衆議院の決算行政監視委員会、参議院の行政監視委員会の設置等と合わせて行われた国会による行政監視機能の一環として設けられたものです。当時多発した官僚不祥事への対策として、あるいは政権交代をきっかけとした国会の機能強化の議論の中から生み出されたものです。

   この英国議会オンブズマンを中心とした苦情処理制度の研究は、当時の制度改正の議論の中で行われたものです。議会による行政監視機能強化の英国における取り組みの様々な要素は、今日でも参考になるかと思い、ここに掲げました。

   研究の中で、「政策」について英国の関係者にインタビューをしています。「行政」の監視を意識し、どこまでをターゲットにするかという問題意識によるものだったと思います。ここに来て「忖度」という言葉はかなり注目されましたが、その言葉は時として論点を複雑にしてしまうのではないかと思います。論点を明確にするには、「政策」、「行政」の問題をそれぞれどう扱うかを分けて考えることも必要なのではないかと思います。

   最後に当時の英国議会特別委員会担当官のユゼフ・アザート氏の言葉を掲げます。

  「苦情処理制度が設立されたのは、まさに人々が、適正行政と市民の公正な取扱いという概念が、実際、法が扱ういかなるものより、幅広いもので、柔軟性があり、より込み入ったもので、より形式的でなく、事案に特有なものだと気づいたからだ。」

   苦情処理の手法である「苦情請願」がその後日本に馴染んだかと問われれば、そうはいってないと言わざるを得ないかと思います。しかし、適正な行政のあり方を求める、議会による行政監視の手法の改革は、民主主義の新たな展開をもたらす可能性を有しているものとして、今後とも探求されてしかるべきものであると考えます。