○「施政方針演説」と「所信表明演説」

 

 

 

総理の「施政方針演説」とか「所信表明演説」という言葉を聞かれたことがあるかと思いますが、これはどういうものでしょうか。

 

 

 

 首相官邸のホームページには、「施政方針/所信表明」として、「内閣の基本的姿勢や取り組むべき諸課題についての演説」とまとめて書いてあります。(https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement2/index.html

 

 

 

 25参先(平成25年版参議院先例録)355では、「毎会期の始めに内閣総理大臣は施政方針等に関し、国務大臣は外交、財政、経済に関し演説するのを例とする」としており(29衆先(平成29年版衆議院先例集)492に同趣旨のものがあります)、その説明として、「常会においては、開会式の後に、内閣総理大臣は施政方針に関し、国務大臣は外交、財政、経済に関し演説するのを例とする(略)」、「臨時会においては、開会式の後に、内閣総理大臣は所信(施政方針)について演説し、国務大臣は外交、財政等に関し、必要に応じて演説するのを例とする(略)」としています。

 

 

 

 常会の冒頭の総理の演説は、「施政方針演説」となるのでしょうか?・・・そうは簡単ではないのです。

 

 

 

「施政方針演説」の説明をもう少しよく見てみると、続いて外務大臣の「外交演説」、財務大臣の「財政演説」、経済財政政策担当大臣の「経済演説」の「政府4演説」を行うことになっています。「施政方針演説」は、内容として「内閣全体の方針」を説明するものです。それは形式的にもこれらと一緒に行うのが自然です。例年は、常会冒頭に次年度予算が提出されますので、総理の国会冒頭の演説の中身は、予算に裏付けされた「内閣全体の方針」であり、他の3演説を伴う「施政方針演説」となります。しかし、常会冒頭に予算が間に合わない時、予算に裏付けされた「内閣全体の方針」は語ることができず、財務大臣の「財政演説」もできません。(25参先355の説明にも「財政に関する演説は、予算の提出に関連して行われる」との記述があります。)そうするとそれは「施政方針演説」とはなりません。臨時国会で予算が提出されていない時に行われる「所信表明演説」と同列のものとなります。

 

 

 

平成25年の第183回国会(常会)では、年末の政権交代により予算編成が遅れ、1月末に平成24年度補正予算が、2月末に平成25年度予算が提出されました。会期冒頭には次年度予算は形となっていませんので、それに裏付けされた「内閣全体の方針」は語ることができませんでした。

 

 

 

183回国会では、平成25128日に安倍内閣総理大臣から「所信表明演説」が行われ、2月4日には平成24年度補正予算に関する財務大臣の「財政演説」が行われ、平成25年度予算提出後の2月28日にようやく内閣総理大臣の「施政方針演説」と他の3演説からなる「政府4演説」が行われたのでした。