◎議員の不逮捕特権

 

 

 

 議員の不逮捕特権は、「議会制度の発展の過程において発達した制度であって、その趣旨は、議員の身体の自由を保障し、政府の権力によって議員の職務の遂行が妨げられないようにするにある。すなわち、政府が反対党の議員を政略的に逮捕し、不当に議会を支配使用とすることを防止しようとするものである」とされます(佐藤功『日本国憲法概説』(全訂第2版)学陽書房、昭和56年)。

 

 この趣旨を、①公権力による不当な逮捕によって議員の職務遂行が妨げられることを防止すること、②議員が新対応の拘束を受けることで議院の審議活動に支障を来すことを防止すること、と分けて整理する考え方もあります(森本昭夫『逐条解説 国会法・議院規則 国会法編』2019年、弘文堂)。いずれにしても会期中にのみ認められるもので、国会法第33条にあるように、会期中その議員の所属する議院の許諾がなければ逮捕されません。

 

 会期前に逮捕され、釈放されていない議員がいる場合は、国会法第34条の2により、会期の始めに、その議員の属する議院の議長に、令状の写を添えて氏名が通知されることになります。

 

 

 

[日本国憲法]

 

第50条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

 

 

 

[国会法]

 

第33条 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。

 

第34条 各議院の議員の逮捕につきその院の許諾を求めるには、内閣は、所轄裁判所又は裁判官が令状を発する前に内閣へ提出した要求書の受理後速かに、その要求書の写を添えて、これを求めなければならない。

 

第34条の2 内閣は、会期前に逮捕された議員があるときは、会期の始めに、その議員の属する議院の議長に、令状の写を添えてその氏名を通知しなければならない。

 

   内閣は、会期前に逮捕された議員について、会期中に勾留期間の延長の裁判があつたときは、その議員の属する議院の議長にその旨を通知しなければならない。

 

第34条の3 議員が、会期前に逮捕された議員の釈放の要求を発議するには、議員二十人以上の連名で、その理由を附した要求書をその院の議長に提出しなければならない。