◎「日切れ法案」と「日切れ扱い法案」

 

 

 

平成3044日の参議院本会議で、国際観光旅客税法案について、次のようなやりとりがなされました。

 

 

 

○古賀之志君

 

「法案の取扱いについて、具体的には、予算関連法案扱い、いわゆる日切れ法案扱いとした財務省の説明についてです。」「平成30年度に入った今日の段階で代表質問を行っているように、日程的には特に問題なく審議が始まろうとしています。そうするとなぜ日切れ法案扱いとの説明を我々は繰り返し受けたのか、年度を越えたことによりどのような不具合が具体的に起きたのか、あるいは予想されるのか、実はフェイク日切れ法案がほかにも紛れているのではないかという疑問が当然のように発生します。」

 

 

 

○国務大臣(麻生太郎君)

 

「国際観光旅客税法案の日切れ扱いについてのお尋ねがあっております。」「国際観光旅客税は、観光施策の充実が急務である中、平成30年度予算において本税の税収を充てる事業は、課税の根拠となる本法案が成立をしておりませんと執行ができず、4月1日施行とされております国際観光振興法の改正案を併せ、早期の成立が必要であったこと、また、本税の円滑な導入のため、事業者の準備期間として9か月間程度の期間を確保する必要があったことから、本法案を日切れ扱いとして早期の御審議をお願いしてきたものであります。」「観光施策の推進や事業者の準備に及ぼす影響が深刻化することのないよう、一日も早い成立をお願いするものであります。」

 

 

 

 

 

「日切れ法案」とは、法規上の用語ではありません。政府から、主に年度末の特別な処理が必要な法案として、与党に示され、与党が野党に働きかけて優先して処理すべきものとして協議の上、扱いが決定されるものです。

 

 

 

辞書的には、「時限法の期限延長のための法律案、特定の期日に開始すべき施策に関する法律案、予算と関係する法律案など、一定期日までの成立が不可欠とされる法律案。」とされます(大辞林(三省堂))。

 

 

 

「日切れ法案」は、基本的に「特定の期日」に関する規定が内容としてあるものです。

 

 

 

「日切れ扱い法案」というものもあります。これは、「「日切れ法案」ではないが、「年度内に成立しない場合に国民生活等に重大な支障を来す議案」」とされます。

 

 

 

その「年度内成立を要する理由」については、当該議案が成立していないことにより、その内容としている事項が実施できないというのは、全ての議案について共通することなので、それだけでは理由にならず、その内容としている事項が実施できないことによって、どのような支障(単に行政事務上のそれにとどまらない支障)が生ずるかが問われるものとされます。

 

 

 

元復興庁事務次長の岡本全勝氏は、そのHP http://zenshow.my.coocan.jp/)で、「地方交付税法改正は、厳密には日切れではありません。しかし、年度末までに成立しないと、地方団体が安心して新年度の事業ができません。また、近年では総額の特例(加算)を講じているので、改正法が成立しないと、4月分の概算交付の額が、大幅に小さくなり、地方団体の資金繰りが困ります。このようなものを「日切れ扱い」といって、3月末までの成立をお願いします。」としています。