○子供の貧困対策

 

 

 

 子供の貧困率という指標があります。

 

17歳以下の子供全体に占める等価可処分所得が貧困線(等価可処分所得(世帯の可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額)に満たない子供の割合とされます。

 

 この子供の貧困率の日本の値が、平成22(2010)OECD加盟34ヶ国中25位とされました(OECD2014年)データ。日本は平成21年(2009年)15.7%)。社会における格差の広がりの子供への影響が国際社会の中でも、深刻な状況にあることが示されたのです。(厚生労働省国民生活基礎調査によるもの。このほかに総務省全国消費実態調査特別集計による子供の貧困率の統計があり、平成21(2009年)で9.9%。)

 

 日本の子供の貧困率は更に悪化し、平成24年(2012年)には16.3%とされました。

 

 こうした中、貧困の状況にある子供が健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため子供の貧困対策を総合的に推進することを目的に、「子どもの貧困対策の推進に関する法律案」が衆議院厚生労働委員会で起草され、制定されました(平成25年法律第64号、平成26117日施行)。

 

 同法に基づき、平成26年(2014年)829日に、「子どもの貧困対策に関する大綱」が閣議決定され、各種施策が実施されました。

 

 各種取組は、これまで、特に教育支援に関して、一定の成果をあげるとともに、子供の貧困率などの指標も、厚生労働省「国民生活基礎調査」ベースで、平成24(2012)16.3%から平成27年(2015年)には13.9%になる等、改善の傾向をもたらしています。

 

 その一方で、教育以外の分野の支援も更に進めること、地域によって子供の貧困対策の手厚さにばらつきがないようにすることなどが課題として指摘されていました。

 

 同法附則の第二条には、「政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とあることに加え、関係団体からも見直しを求める声が上がっていました。

 

 こうした中で、令和元年(2019年)531日、衆議院内閣委員会において「子供の貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」(衆第13号)が全会一致をもって起草されました。

 

 その主な内容は、まず目的に、子どもの貧困対策は、子どもの「将来」だけでなく「現在」に向けた対策であること、子どもの貧困対策を「子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにするため、子どもの貧困の解消に向けて、児童の権利条約の精神にのっとり」推進すること等を追加するとともに、基本理念を見直すほか、大綱の記載事項に子どもの貧困対策に関する施策の推進体制に関する事項を追加し、市町村が子どもの貧困対策についての計画を定めるよう努める旨を規定する等の措置を講じようとするものです。

 

(法案の新旧対照表(衆議院法制局ホームページ)参照)

 

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/pdf/198hou13sinkyu.pdf/$File/198hou13sinkyu.pdf

 

 令和元年(2019)612日、同法律案は参議院本会議において、全会一致で可決され、成立することとなりました。