○記憶は消えても愛は消えない。<成年後見制度>

 

 

 

映画『長いお別れ』のコピーは、「だいじょうぶ。記憶は消えても愛は消えない。」です。目の前にいる女性が奥さんであることは忘れても、目の前にいる女性を愛する気持ちは生きており、再度のプロポーズをしてしまう。「愛は消えない」ことでもありますし、その範囲内で認知症のご主人の意思の表明はなされている訳です。

 

 

 

第198回国会において、「成人被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案(第196回国会閣法第56号)」が審査されました。

 

 

 

認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより、財産の管理、契約の締結、遺産分割の協議等を自分で行うことが難しい場合、その判断能力を補い、財産等の権利を擁護するための援護者を選ぶことで法律的に支援するのが成年後見制度です。

 

 

 

成年後見制度を利用する者が成年被後見人とされます。

 

 

 

成年後見制度の利用を躊躇させる要因の一つとして、成年被後見人又は被補佐人を資格、職種、業務等から一律に排除する規定(欠格条項)等が置かれてることがあるとされています。

 

 

 

第196回国会閣法第56号では、欠格条項が規定されている178の法律を改正し、心身の故障の状況を個別的、実質的に審査し、制度ごとに必要な能力の有無を判断する規定へと適正化する等を目指されています。

 

 

 

平成25年筑波大学研究方向による2012年(平成24年)における認知症の有病者数は426万人とされます。

 

平成3012月末現在の成年後見制度の利用者は、218千人余です。

 

将来推計では、2025年(令和7年)の認知症の有病者数は700万人となります。

 

欠格条項の撤廃、高齢化の進捗で、成年後見制度の利用者は、今後大幅に増加することが考えられます。

 

 

 

障害者の権利に関する条約第12条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の自己決定権が最大限尊重されることが求められています。現状の問題点の把握を行い、それに基づき、必要な社会環境の整備等を図ることが求められています。

 

(障害者の権利に関する条約第12条・・・第1項「締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。」・・・第4項「(略)法的能力の行使に関連する措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること、()」)

 

難しい面もあるかと思いますが、認知症の方の意思の尊重ということも求められているのです。

 

 

 

平成30年の成年後見人等と本人との関係を見ると、親族が23.2%、それ以外の者(弁護士、司法書士、社会福祉士等)が76.8%。今後、高齢化の進捗に伴い、成年後見人の需要が増大する場合、弁護士等の専門家に委ねられる範囲は限度があることが想定されることもあり、平成29年に閣議決定された政府の「成年後見制度利用促進基本計画」には、全国の市町村の直営・委託による地域連携ネットワークの中核機関の設置が盛り込まれています。成年後見人等として増加するであろう親族や市民後見人(研修等により養成される)の支援を行い、成年後見人制度の充実を図ろうとするものです。

 

 

 

 

成年後見制度の現状(令和元年5月・厚生労働省)

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000510481.pdf

 

 

 

少子高齢化の急速な進展は、当該法改正以外にも、愛ある「長いお別れ」のための、様々な対策が求められていると考えます。