○「重要広範議案」

 

 

 

「重要広範議案」とは、法規に根拠のある名称ではありません。しかし、その法案が重要で、その審議に総理の出席を伴うものとして衆議院の議院運営委員会理事会で決めたものという認識のもと、国会の会議録にもその名前を記しています。最初に出て来たのは、平成12年(2000年)322日、第147回国会衆議院商工委員会会議録第5号の渋谷修議員(民主党)のもので、「私は本当は、通産大臣、これは重要広範議案で、きちんとした手続をもって本会議場できちんと説明をし、総理も含めて答弁をするような重要な法律だというぐあいに思うんですよ、」というものです。

 

 

 

南部義典「本会議趣旨説明要求-衆議院における運用経過と制度の再定位-」『法制度研究第2号(20163月)』では、次のように記述しています。

 

「重要広範議案とは、登壇議案のうち、その内容が重要かつ広範に及び、内閣総理大臣が本会議及び付託委員会で答弁すべきものとして、衆議院議運理事会の合意に基づき指定されるものをいう。」「慣例上、各国会会期における指定件数は、常会では4件、臨時会では2件が目安とされており、すべて衆議院先議の案件として扱われる。」と。

 

その生成経緯は、「重要広範議案は、「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」(国会審議活性化法、平成11730日法律第116号)の制定に伴い、党首間討議(党首討論)の運用が始まり、週1回(水曜日)、内閣総理大臣が国会に必ず出席する場が設けられたことから、趣旨説明に対する質疑、法案審査等で本会議、委員会に出席する場合を限定すべきとの主張を背景に生み出された概念である。「国家基本政策委員会の設置、政府委員制度の廃止及び副大臣の設置並びにこれらに伴う関連事項の整備等に関する合意」(1999614日)において、内閣総理大臣が出席すべき本会議、委員会として「重要かつ広範な内容を有する議案の趣旨説明に対する質疑」が挙げられており、これが重要広範議案の中核概念として現在まで踏襲されている。」としています。

 

 

 

平成29年は、国会の党首討論が平成12年の正式導入後、初めて年間に1回も開かれませんでした。内閣総理大臣の国会答弁のあり方等も含め、国会活性化の見直しを求める声も出ていますが、この「重要広範議案」の制度をなくすという話にまではなっていません。