○「基本法類」の構造分析

 

 

「何々基本法」・「何々推進法」と称する法律の、特に議員立法による増加は、時に「立法のインフレーション」とも言われ、立法に関する研究者の中で広く認識されるようになって来た。「何々基本法」と称する法律、すなわち「基本」という言葉が題名に入った法律、「基本法」については、いくつかの先行研究はあるが、「「何々基本法」・「何々推進法」の類」として、「基本法」ではないが、同類に扱って良い立法というものの範囲等については、正面から取り上げたものは見当たらない。論者は今日の積み重ねの実情は、この種の法律の役割を積極的に評価すべき時期の到来と考えるが、そうしたことの前段階に存在する問題として、その積み重ねの認識がより実感を伴って共有化されることがなされていないことがあるのではないかと考える。

 

この種の法律を本論では、「基本法類」と名付けることとする。「基本法類」の把握は、主として、平成20(2008)年に塩野宏教授が作成した「基本法」の分析表を基に、各項目を数値化し合算した「基本法類度」を「基本法」以外の法律にも用いて行う。まず「基本法」と並び扱われた「何々推進法」、すなわち「推進」という言葉が題名に入った「推進法」、次に「推進」と同じく「promote」が英訳語になる「促進」という言葉が題名に入った「促進法」を分析する。これらにより、「基本法類」の性格付けと積み重ね(本論では「量産化」と言う)の実態の明確化により近づけるのではないかと考える。分析の結果、特に「促進法」については、「促進」と言う言葉が題名にあるだけでは、直ちに「基本法類」と考えることはできず、個々の法律の構造等を分析して判断する必要があるということが判明した。こうした分析は、「基本法類」として意識すべきものは何かということ、そしてその実態をより明確に認識させてくれるのである。

 

 

法政大学大学院公共政策研究科『公共政策志林 第5号2017年3月』に掲載された投稿論文。

http://jairo.nii.ac.jp/0044/00012610