◎地方分権改革「提案募集方式」

 

 

 

・地方分権改革と言うと、いわゆる「三位一体改革」等の印象が強いかと思います[1]。それは、国が主導で、「地方に出来ることは地方に」を考えて改革を行っていくイメージかと思います。確かに、平成26年(2014年)までは、国の地方分権推進委員会の勧告に基づく「委員会勧告方式」により国主導の形で進められてきましたが、その後、地方の発意に根ざした新たな取組を推進することとして、「提案募集型」が導入されました[2]

 

・地方からの提案については、内閣府が関係府省と調整等し、年末までに対応方針がまとめられ、有識者会議の調査審議を経て、地方分権改革推進本部決定及び閣議決定が行われます。法律改正すべきものは、所要の法律案が国会に提出されます。

 

・このように、地方から何が提案されるかによりますので、「地方分権改革法」の内容は、その時々に、様々なものとなってしまいます。平成30年の地方からの提案等に関する対応方針は、内閣府のHPに掲載されていますが、これらから法改正が必要なものが(それ以前で法改正が行われていないものも含めて、)一括法で出されるので、それこそ認定子ども園の件から建設業の許可申請等まで、幅広い内容となります。https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kakugiketteitou/kakugiketteitou-index.html

 

 

 

◎地方創生

 

 

 

・「地方創生」という言葉は、第2次安倍改造内閣発足時の平成26年(2014年)93日の安倍内閣総理大臣記者会見で、「改造内閣の最大の課題の一つが、元気で豊かな地方の創生であります。人口減少や超高齢化といった地方が直面する構造的な課題に真正面から取り組み、若者が将来に夢や希望を持つことができる魅力あふれる地方を創り上げてまいります。」という形で使われました。

 

・地方分権改革が「提案募集方式」となるのが平成26430日の地方分権改革推進本部決定であるので、地方主導の地方分権改革と国が旗を振る地方創生は、地域活性化の両輪と言うべきものとして今日位置づけがなされるようになったと言っても良いのではないかと考えます。

 

・平成2611月には、「まち・ひと・しごと創生法」(平成26年法律第136号)が成立。地方創生は、「まち・ひと・しごと創生」として、「国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成、地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保及び地域における魅力ある多様な就業の機会の創出を一体的に推進すること(以下「まち・ひと・しごと創生」という。)」と第1条に記述されています。

 

・同法に従い、平成261227日に「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」が、そして「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されました。「総合戦略」は、「長期ビジョン」を踏まえ、2015年度を初年度とする今後5か年の政策目標や施策の基本的方向、具体的な施策をまとめたものとされます。「総合戦略」には地方における安定した雇用を創出する、地方への新しいひとの流れをつくる、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する、の4つの「基本目標」が掲げられました。5か年の戦略・実行して、重要業績評価指標(KPI)で検証・改善する仕組みを確立することとされました。「総合戦略」は、毎年12月に改定され、進捗状況を検証しつつ、必要な見直しが行われています。

 

 

 

○地域再生

 

 

 

・地域再生制度は、地域が行う自主的・自律的な取組を国が支援し、地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出等地域の活力の再生を図る目的で、平成17年に成立した地域再生法(平成17年法律第24号)により創設されました。内閣総理大臣が認定する地方公共団体が作成する地域再生計画に記載した事業の実施に当たり、財政、金融等の支援措置を活用することができることになっています。

 

・地域再生法についても、「地方創生」の実現に向けた改正が逐次行われており、平成26年には同法第2条に定める基本理念に関し「まち・ひと・しごと創生法」の基本理念と調和を図る等のため改正が行われたほか、平成28年には、「地方創生推進交付金」及び「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税制度)」の創設、「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」の制度化等のため、地域再生法を改正することで対応されてきました。

 

・まち・ひと・しごと創生総合戦略の2年目(2015年改訂版)において、「地方創生版・三本の矢」として、情報支援、人材支援、財政支援が掲げられ、地域再生法により創設された「地方創生推進交付金」及び「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税制度)」は、その内の財政支援の主たる内容となっています。

 

・内閣府地方創生推進事務局のHPhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/tiikisaisei/)の地域再生制度の概要ペーパーには、「地方創生全体の方向性を定める「まち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号)」と、個別の地域における地方創生の実現のための具体的な支援措置を提供する「地域再生法」、これら2つの法律が両輪となって地方創生を推進」とあります。

 

・地域再生法に基づく支援としては、財政、税制、手続の特例がメニューとして掲げられています。

 

 

 

 

 



[1] 「三位一体改革」は、国庫補助負担金の廃止・縮減、税財源の移譲、地方交付税の一体的な見直しを指し、平成14年(2002年)の経済財政諮問会議にて片山虎之助総務大臣より提示されたもの。

[2] 地方分権改革に関する提案募集の実施方針(平成26430日地方分権改革推進本部決定)。「これまで地方分権改革については、地方分権改革推進委員会勧告(以下「委員会勧告」という。)に基づき、地方公共団体への事務・権限の移譲、義務付け・枠付けの見直し等に関して、3次にわたる一括法等により着実に推進し、進展をみている。

これに加え、第4次一括法案(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(平成26 年閣法第66 号))及び「事務・権限の移譲等に関する見直し方針について」(平成251220 日閣議決定)により、委員会勧告事項については、一通り検討したこととなる。

このような成果を基盤とし、個性を活かし自立した地方をつくるためには、地方の声を踏まえつつ、社会経済情勢の変化に対応して、引き続き地方分権改革を着実に推進していく必要がある。

このため、新たな局面を迎える地方分権改革においては、従来からの課題への取組に加え、委員会勧告方式に替えて、地方の発意に根ざした新たな取組を推進する。具体的には、個々の地方公共団体等から地方分権改革に関する提案を広く募集し、それらの提案の実現に向けて検討を行う(以下このような改革推進の方式を「提案募集方式」という。)。」